3階建てにすると建築コストはどれだけ上がるのか


新潟市中央区で住宅ライターとプランの監修をしている戸倉亮平と申します。
市内の設計事務所で12年ほど、狭い土地や変形した土地の住宅を担当していました。
そのあと県内の住宅会社で商品開発とプランニングを6年やって、2019年に独立しています。

相談の場で、よく聞かれる質問があります。
「3階建てにすると、2階建てよりどれくらい高くなりますか」です。

設計事務所にいたころの私は、「2割くらいでしょうか」と答えていました。
今にして思うと、あまり良くない答え方でした。
その2割がどこから出てきた数字なのか、自分で説明できなかったからです。

この記事では、パーセントの話をいったん脇に置きます。
代わりに、2階建てと3階建てのあいだで何が切り替わるのかを、法令と実際の価格表から順に見ていきます。
新潟で建てる場合に何が上乗せされるのかも、最後に金額で確かめます。

「2階建てより2〜3割高い」という数字に、出典はありません

先に結論を書きます。
「3階建ては2階建てより何割高い」という数字を、公的な統計から出すことはできません。

国土交通省の建築着工統計には、地上階数別の集計表があります。
ただしその表が持っているのは建築物の数と床面積と敷地面積だけで、工事費の予定額は含まれていません。
一方、工事費予定額を持っている表は、構造別や用途別の区分しかなく、階数で分かれていません。

つまり「3階建て1棟あたりいくら」という数字は、そもそも国が集計していないのです。
都道府県別に絞ればなおさらで、新潟県の3階建ての工事費だけを取り出すことはできません。

住宅会社のコラムや掲示板を見ると、「2割増し」「1.2倍から1.5倍」「2割から3割高い」といった数字が並んでいます。
これらが嘘だと言いたいわけではありません。
各社が自分の見積書から得た経験則で、実感としては近いのだろうと思います。

ただ、読む側からは検算ができません。
それなら、検算できる形で自分で計算してみようというのが、この記事の出発点です。

新潟の住宅会社の公開価格を、坪単価に直してみました

新潟市中央区に本社があるハーバーハウスは、扱っている商品の価格を公式サイトで公開しています。
設計費と本体工事費、付帯工事費、住宅設備費を含んだ、いわゆるコミコミ価格です。
そして各商品のページには、参考プランの延床面積が㎡と坪の両方で載っています。

価格を延床面積で割れば、坪あたりの単価が出ます。
主なものを並べたのが次の表です。

商品区分参考プラン延床価格(税別)坪あたり
ECOLOGIA FLAT平屋30.31坪2,636万円87.0万円
VISTA3階建て29.11坪2,432万円83.5万円
BRIGHT2階建て34.67坪2,810万円81.0万円
PLACE2階建て30.55坪2,150万円70.4万円
ORGA2階建て30.35坪2,000万円65.9万円
EXY2階建て30.05坪1,869万円62.2万円

同社の2階建て系11商品で平均を取ると、坪あたり71.2万円でした。
3階建てのVISTAは83.5万円です。
差は坪あたり12.3万円、率にして17.3パーセント。
延床29坪で計算すると、総額の差はおよそ359万円になります。

先に断っておきたいことが3つあります。

  • この坪単価は私が最低価格を参考プランの延床面積で割ったもので、同社が坪単価として公表している数字ではありません
  • 商品ごとに標準仕様が違います。VISTAは全棟で構造計算をして制震ダンパーを入れる仕様なので、階数だけの差ではありません
  • どの商品も「〜から」の価格です。実際の見積もりはここから動きます

それでも、同じ会社の同じ価格体系の中で並べた数字なので、A社の3階建てとB社の2階建てを比べるよりは条件が揃っています。

この表を作っていて、引っかかったことがありました。
いちばん坪単価が高いのは、3階建てではなく平屋なのです。

平屋が高いのは理屈が通ります。
同じ延床なら、平屋は基礎と屋根の面積が2階建ての2倍になるからです。

ところが3階建ては逆で、基礎も屋根も小さくて済みます。
30坪を3層に分ければ1層あたり10坪ですから、基礎と屋根は2階建ての3分の2です。
コストが下がる方向に働く条件を持っているのに、坪単価は平屋に迫るところまで上がっている。

ここに、階数そのものとは別の何かが乗っています。

上がっているのは階数ではなく、法律の段差です

3階建ての価格は、2階建てから連続して少しずつ上がるわけではありません。
ある線を越えたところで、要求される仕様が段差のように切り替わります。
その段差を3つ挙げます。

準防火地域では、守る範囲が外壁の一部から骨格全体に変わります

建築基準法施行令の136条の2は、防火地域と準防火地域の建築物に求める性能を、規模ごとに分けて定めています。
準防火地域の木造住宅について、2階建てと3階建てを並べると次のようになります。

木造2階建て(500㎡以下)3階建て(1,500㎡以下)
根拠令136条の2 第三号令136条の2 第二号
対象になる部分延焼のおそれのある部分の外壁と軒裏主要構造部(柱・はり・床・壁・屋根・階段)
求められる性能防火構造(令108条)準耐火構造(令107条の2)
火熱に耐える時間30分間柱・はり・床・耐力壁は45分間、屋根と階段は30分間

2階建てなら、守るのは家の外周のうち隣地や道路に近い部分だけで、時間は30分です。
3階建てになると、対象が建物の骨組み全体に広がり、時間も45分に延びます。

これは図面の一部を直せば済む話ではありません。
石膏ボードの厚さと張り方、柱や梁の被覆、使える認定仕様の範囲まで、家じゅうに影響します。

新潟市の市街地にも準防火地域に指定されている区域があります。
自分の土地がどう指定されているかは、新潟市が公開している都市計画情報の地図サービスで調べられます。
土地を買う前に見ておくと、見積もりの読み方が変わります。

地盤調査を省略できる側から外れます

国土交通省が公開している住宅瑕疵担保責任保険の設計施工基準は、基礎の設計に先立って地盤調査を行うよう定めています。
ただしここには但し書きがあって、一戸建ての2階建て以下の木造住宅については、現地調査の結果で必要ないと認められれば調査を省略できるとされています。

3階建ては、この但し書きの対象に入りません。
つまり地盤調査は必ず実施することになります。

基礎も同じです。
同じ基準に付いているべた基礎の配筋表は、「重い住宅」と「軽い住宅」のどちらも2階建てを想定して作られています。
3階建てはこの表の適用範囲の外にあり、配筋は構造計算で決めることになります。

構造計算そのものも、階数で扱いが分かれます。
建築基準法20条は、木造で地階を除く階数が3以上のものには許容応力度計算を求めています。
一方、木造2階建てで延べ面積300㎡以下なら、壁量計算などの仕様規定で足ります。

設計にかかる手間の話でもあるので、これは設計料に出ます。

新潟では、そこに雪の重さが乗ります

積雪荷重の基準は建築基準法施行令86条にあります。
一般の地域では、積雪1センチメートルごとに1平方メートルあたり20ニュートン以上とされています。

新潟市は市の細則で、市全域を多雪区域に指定しています。
そして積雪の単位重量を、1センチメートルごとに1平方メートルあたり30ニュートン以上と定めています。
一般の地域の1.5倍です。

垂直積雪量は区ごとに決まっていて、市が公表している別表によれば中央区・東区・西区はいずれも全域が100センチメートル、秋葉区の一部は130センチメートルです。

中央区で計算してみます。
100センチメートル掛ける30ニュートンで、1平方メートルあたり3,000ニュートン。
重さに直すと、およそ300キログラムです。

屋根に勾配があれば低減できる規定はありますが、新潟市は融雪装置や屋根勾配によって100センチメートル未満に減らすことはできないとしています。
この雪の重さを、3層分の建物の自重と一緒に、許容応力度計算に載せることになります。

2階建てなら、その計算自体が要りません。
新潟で3階建てを建てるというのは、そういう作業を1件増やすということでもあります。

2025年4月の法改正で、2階建てとの差はむしろ縮まりました

ここ1年ほど、「法改正で3階建ての手続きが厳しくなった」という話を耳にします。
これは逆です。

木造3階建ては、もともといわゆる4号特例の対象外でした。
改正前から建築確認で構造関係の審査を受けていたので、この点で新しく増えたものはありません。

変わったのは2階建ての側です。
2025年4月に施行された改正で、建築基準法6条1項2号の対象が「二以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超える建築物」になりました。
木造2階建ても、確認申請のときに構造関係と省エネ関係の図書を出すことになったわけです。

手数料にも表れています。
新潟県が2025年4月に改定した手数料表では、床面積100㎡超200㎡以下の建築確認は、確認の特例があれば21,000円、なければ33,000円です。
3階建ては当然「特例なし」ですが、2階建ても特例から外れました。
この12,000円の差は、もはや階数による差ではありません。

さらに言えば、3階建てにとっては緩んだ部分もあります。
国土交通省の改正法制度説明資料によれば、より高度な構造計算が必要になる木造の境界が、従来の「高さ13メートル超または軒高9メートル超」から「階数4以上または高さ16メートル超」に変わりました。
断熱材が厚くなって階高が上がってきた実情に合わせた見直しです。
3階建てで階高に余裕を持たせても、高度な計算まで飛ばずに済むようになりました。

残っている本当の差は、手続きの数ではありません。
構造計算が要るか要らないか、そして防火の要求がどこまで及ぶか。
この2つです。

新潟で3階建てが金勘定に合うのは、坪36万円を超える土地だけです

3階建ての教科書的な説明は、だいたいこうなっています。
土地を小さくできるから、その分だけ土地代が浮く。
建物が割高でも、土地の節約で取り返せる、と。

東京ならそのとおりです。
新潟では、そうはいきません。

新潟県が2026年3月18日に発表した令和8年地価公示によれば、県内の住宅地で最も価格が高いのは新潟市中央区水道町2丁目で、1平方メートルあたり172,000円でした。
坪に直すとおよそ56.9万円です。
県全体の住宅地の平均は29年連続で下落していますが、価格が上昇した83地点のうち61地点が新潟市に集中しています。

この地価と、先ほど計算した3階建ての割増359万円を突き合わせてみます。
土地を10坪小さくしたとき、何万円浮くのかという比較です。
中央区の高価格帯は地価公示の数字、それ以外の行は不動産情報サイトに出ている実売の目安です。

エリア坪単価の目安10坪縮めた節約額割増359万円との差
中央区の高価格帯56.9万円569万円プラス210万円
中央区の平均的な住宅地36万円前後360万円ほぼ差なし
西区18万円前後180万円マイナス179万円
江南区・秋葉区12万円前後120万円マイナス239万円

境目は坪36万円あたりにあります。
それより安い土地では、10坪削っても3階建ての割増を回収できません。

新潟市でこの線を超えるのは、実質的に中央区の市街地くらいです。
西区や江南区で「土地を小さく買って3階建てにすれば安く上がる」と考えると、たいてい計算が合いません。

裏を返せば、新潟で3階建てが建っているとき、そこには金勘定以外の理由があるということです。
この場所を離れたくない。
車を家の中に入れたい。
階ごとに暮らしを分けたい。

万代エリアから歩いて10分ほどの場所に、3階建てのモデルハウスが建っています。
1階に5.8メートルの開口を取ったガレージがあり、上の階に吹き抜けのリビング、屋上にテラスという構成です。
新潟のハイエンドモデルハウスとして公開されている動画を見ると、その土地でその使い方をするために、どこに面積を割いているかがよく分かります。

同じ延床面積の2階建てを郊外に建てたほうが、総額は確実に安く済みます。
それでもこの場所に3階で建てる理由は、価格表の外側にあります。

まとめ

見てきたことを整理します。

  • 「3階建ては2階建てより何割高い」という数字に公的な出典はない。国の統計は階数別の工事費を集計していない
  • 新潟の住宅会社の公開価格から計算すると、3階建ての坪単価は2階建て平均より12.3万円高く、延床29坪で約359万円の差になる
  • 割高になる中身は階数ではなく、準防火地域の防火性能、地盤調査と基礎、構造計算という3つの段差
  • 新潟市では市全域が多雪区域で、中央区なら1平方メートルあたり約300キログラムの雪を計算に載せる
  • 2025年4月の法改正で厳しくなったのは2階建ての側。3階建てとの手続きの差はむしろ縮まった
  • 土地代の節約で割増を回収できるのは坪36万円を超える土地。新潟では中央区の市街地くらい

見積もりを受け取ったら、総額のパーセントではなく、防火の仕様と基礎の配筋と構造計算の項目を見てください。
そこが2階建てと違っている理由を説明してもらえるなら、その金額には根拠があります。

3階建てを選ぶかどうかは、損得だけでは決まりません。
ただ、損得の側の数字を先に押さえておくと、それ以外の理由で決めるときに迷いが減ります。

Last Updated on 2026年8月30日 by kiyo80